女性だけの舞台「宝塚歌劇団」の魅力に迫る!
初めて宝塚歌劇団のファンを目にした時は、あまりにも衝撃的で、今でも鮮明に覚えています。
雨の中、東京・日比谷の劇場街の裏通りを歩いていると、何百人もの傘を持った人たちが集まる、ざわざわとした光景が目に飛び込んできました。
「デパートのセール?」「ハリウッドセレブが来ている?」「政治団体?」と疑問に思い、その場で尋ねると、演劇俳優が劇場から出でくるのを待っているのだと…。
俳優さんは聞いたことのない名前でしたし、出待ち集団の全員が女性だったので、きっと若くてカッコよくて男らしいスターなのだろうと思っていました。ところが実際に出てきたのは、たしかに若くてカッコよかったのですが、なんと女性でした!
女性だけで構成される「宝塚歌劇団」は、日本人の心の奥底にある何か、少なくとも女性的な部分に触れているのでしょう。これほどまでに熱狂的なファンがいるのですから。
なんとファンの9割は女性で、25歳以下が大半を占めています。彼女たちのイチオシは、男性を演じる「男役」女優です。
男女平等が叫ばれて久しい男尊女卑の社会の中で、男役は、若い女性たちが強さや力をなんとか見出して生きていくためのモデルとなっています。しかしファンが本当にハマっているのは、古き良き、純粋なおとぎ話のようなロマンスストーリーなのです。
そのため宝塚では、ロマンスとスペクタクルに満ちていながらも、下品さや激しさのないストーリーを上演しています。ちょうど、ディズニーの美化されたラブストーリーと似たような感じですね。
宝塚は、数百人の劇団メンバーで構成され、国内外で年間を通して、公演を行っています。宝塚音楽学校には、毎年多くの若い女性が応募しますが、40〜50人の新入生しか受け入れていません。
幸運にも合格した生徒は、2年間の厳しい修養と訓練を受けることになります。後輩生徒は学校の廊下を歩く際、出会った先輩にお辞儀し挨拶をしなければならない、という厳しい校則もあります。また、演技、歌、ダンス、音楽、演劇史などの授業に加えて、定期的に寮や教室の掃除も行います。
掃除はモップやたわし、歯ブラシなどを使って手作業で行われ、先輩はちゃんとできているかをチェックします。生徒は1年間指導を受けた後、「男役」と「娘役(女役)」のどちらかを希望します。ここでも身長・体格・歌声が審査される、激しい競争が待っています。訓練を終え卒業した生徒は、いずれかの劇団に所属することになるのです。
宝塚には、もともと5つの組がありました。「花」「月」「星」「雪」「専科」でしたが、1998年には「宙(そら)」が加わりました。各組には、約80名のタカラジェンヌが所属し、男役・女役それぞれのリーダーがいます。
専科は40歳以上のメンバーを対象に設立され、次第に組間を行き来する女優の拠点になっていきました。毎年、各組は兵庫の宝塚と東京の2箇所で公演を行います。